望み

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雫井脩介氏の「望み」が映画化されているらしい。
私は、原作を読んだ小説の映像は、ほとんど鑑賞するようにしている。
同氏の「犯人に告ぐ」などは、比較が興味深かった。
だが、さすがにこの物語は、映画では観ないだろうと思っている。

息子が行方不明になり、殺人事件に関与している可能性が高い。
だが、被害者か加害者なのかもわからない。
生きているか死んでいるかもわからない。
世の中は大騒ぎになり、SNSでは、さまざまは誹謗中傷が広がり始める。
無責任なマスコミが家の周りで騒ぎ始め、家族は普通の生活が送れなくなる。

父親は、どう行動するのか。
母親は、何を一番に感じるのか。
妹は、どうやって心を取り戻すのか。
何を信じたら良いのか。

とにかく、場面描写がリアルに究極すぎて、こちらの心が揺さぶられすぎてしまう。
本作のタッチは見えない事件の裏に見え隠れする人間模様と心理描写が秀逸なのだけど、推理小説としての要素も多分にあるので、読者の推理としてはハッピーな方向で読み進めていくことも可能なので、ついつい安易でハッピーな展開を期待するのだが、作者がそれを許してくれない。

誰にでも訪れるかもしれない悲劇。
明日が今日とは同じではないかもしれないという現実。

私が映画は観ないだろうと思うのは、結末がわかってしまった上で、違う描写をこれでもかと心に刻んでいく勇気がないからである。
それほどまでに、本作のテーマは深い。
甚だ、無責任な言い方しかできないが、すでに映画が公開されているようなので、きっと映画を先に観てから小説を読むと良いのではと思う。

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