水泳帽に黒ライン3本(感動的想い出シリーズ)3

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小学校の水泳進級(5級)試験。
10m泳ぎきれば合格だが、息継ぎがギャンブル状態なので合否はカツカツな状態だった。
そこで父と「できるだけ息継ぎをしないで、行けるところまではいく」という作戦をたてた。
「できるだけ息をたくさん吸ってから潜る」はずだったのだが、緊張のため、あまり吸えずに潜ってしまった。

加えて、、
「しまった」という思いから、壁を蹴るタイミングも逸してしまい、いつものように蹴伸びで進んでいかない。
さらに、、
あわててしまったため、いつもより速くバタ足とクロールの腕(猫パンチ)を始めてしまう。

何とか進んでいるのはわかるのだが、距離感がいつもと違う。5mに達したときに急に苦しくなってきた。
気づくと、息継ぎを試みていた。
そのときの私の息継ぎは、顔を横にむけるだけでは上手に空気を取り込むことができず、横に向けた顔をあごを突き出して正面に向けてから沈むというものであった。
そのとき何とか空気は取り込めたが、もともとギャンブルである。鼻の奥にツンとした刺激もあったし、立ち止まってしまうほどではないにしろ水も飲んだ。
もはや、何m地点にいるのかもよくわからない。

そして、喘ぎながらの2度めの息継ぎのとき、自分が思っているより前に進んでいるのがわかった。
顔を前に向けたときに、応援してくれている人の声と姿が1mほど先に感じられたのである。
「届くかも」と一瞬期待したが、今度はもろに水を飲んでしまった。

あと1m。。。
小さい頭でも、働かない頭でも、ここであきらめたらどんなに悔しい思いをするかどうかくらいはわかる。
何とか、たどりつきたい一心だったが、もはや息継ぎをする余裕はないし、手足を動かすしかない。
傍からみれば、溺れているようにしか見えなかったであろう。
頭が真っ白になりかけたとき、右手親指の付け根部分が硬いものを殴った。
プールの端にたどり着いたのである。
その右手を例の「おもしろい先生」が握って軽々と引き上げてくれた。
そこにいた小学生と先生の盛大な拍手が聞こえた。
私は、充血した目と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で、引き上げてくれた先生の顔をみていた。
「やったな」と声がかかる。
合格だ!

しかし、、、
このときの内山くんには大きな秘密があった。
(つづく)

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